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助手席物語

助手席物語 #山陽自動車道01

 

うどんが食べたいと言われたので香川
県に車を走らせている。素うどんと
同じくらいシンプルで単純な話。
こんな弾丸旅にドライバーとして
借り出されるなんて我ながら人が
良すぎて情けなくなるが、
まあこんな機会でもないと遠出も
億劫になっていたので、今回は話に
乗ってみようと決めたのだった。
 
今日も助手席にはミサキが、
そして後部座席にもう一人同乗者
がいる。ミサキの妹で、名前は
ミカゲという。今回の旅の発案者
である。歳はミサキの4つ下。去
年高校を卒業して、今は料理の
専門学校に通っているらしい。
何度かミカゲが作りすぎた料理の
おこぼれにあずかったことがある
が、腕は確かにいい。レシピ通り
に几帳面に作られた料理。普段の
やや生意気な性格からすると少し
意外なほどである。最近学校でう
どんについて勉強したため、密か
に讃岐へと想いを馳せていたらしい。
 
どうでもいいけど、
僕は卵と醤油で食べる
釜玉うどんが一番好きだ。
 
出発してからしばらく姉妹は最
近観た映画の話で盛り上がって
いた。一人の女の子が、顔が
そっくりな二人の男に恋をする
という話。僕も一緒に観たけれ
ど、特に意見は求められなかっ
たので大人しく黙っていた。
下手に口を挟まない方がいいこ
とだってある。僕はドライバー
然としてキビキビと運転に専念
する。
 
アクセルペダルを踏み込むと、
緩やかな傾斜を気持ち良く駆け
上がっていく。まるで僕の気持
ちとクルマが呼応しているよう。
山陽自動車道を走っていけば二
時間ほどで瀬戸大橋まで行ける
だろう。
 
気がつくと静かになっていたの
でルームミラーで確認すると
ミカゲは気持ちよさそうに眠っ
ていた。クルマ酔いするからと
か言って騒いでいたのが嘘のよ
うに安らかに。座って寝るとき
に腕組みするのがミサキと
そっくりだ。ふと隣を見たがミ
サキは眠っていなかった。僕が
ルームミラーを確認する様子を
見て、そっと音楽のボリューム
を下げると前を向いてしまった。
さっきまでメロウに歌っていた
tofubeatsの声が急に遠ざかっ
た。空は薄曇りだが気温は
ちょうどよく、まあ悪くないド
ライブ日和だ。久しぶりのロング
ドライブでデミオも嬉しそうに
走っている。
午後には晴れてくるだろう。
 

 
 
前走車を遠くに眺めながら、釜
玉うどんに何の天ぷらを載せよ
うかと考えていると、ミサキに
「シンメイシンって何?」と訊かれた。
「シンメイシン?」
あまりにも不意を突かれたので
僕はオウム返しで聞き直した。
 
「えーと、名神だから、名古屋と神戸をつない
でいる道路の、新しいやつじゃないかな?」
さっきまで走っていた道だ。
ミサキが道路に興味を持つなん
て珍しい。
 
「じゃ名阪は?」
「名古屋と、大阪をつないでる道」
「京阪は京都と大阪?」
「そう。阪和は大阪と和歌山」
「ふうん」と呟くと、ミサキは
また黙ってしまった。眩しそう
にしているが実は眠いのがバレ
バレだ。寝てていいよ、と言っ
て僕は彼女の髪に触れた。(続)
 
 
#助手席物語 第3話
#山陽自動車道 #前編
#デミオ #ドライブ
#人馬一体
 
 
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