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助手席物語

助手席物語 #国道二号線

春の気配が一気に増した金曜日の昼下
がり。今日はめずらしく僕が助手席に
座っている。隣で運転しているのは会
社の先輩で、仕事がデキると評判のア
カシさん。職場でもみんなに一目置か
れていて、僕にははっきり言って遠い
存在だ。そんな先輩と同行するなんて
気が引ける、というのが今の本心。あ
まり顔には出ないけれど、これでも緊
張する方なのだ。

今日はアカシさんの担当案件を僕が引
き継ぐことになったので、その挨拶も
兼ねて打ち合わせに向かっている。会
社ではそんな話を聞いたことがなかっ
たけれど、アカシさんはクルマが好き
で休みの日もよくドライブに出かける
らしい。というか学生時代は大学の自
動車部に所属していたというから、筋
金入りのクルマ好きだと思う。

運転席に乗り込むと手早くミラーと座
席を調節し、エンジンをかけてハンド
ルを握るとそのまま撫でるように手を
滑らせた。端正な顔立ちとはやや不釣
り合いに手は大きく無骨な感じがした。
何度も行ったことがある道だからか、
アカシさんはナビも設定せずにすぐに
出発した。 薄くかけたラジオからは
Kiss FMが流れている。女性の声がテ
キパキと情報を伝えているが、音量が
小さすぎて何を言っているのかは聞き
取れない。

国道二号線に出るとアカシさんは、沈
黙を気まずく思っている僕の心の中を
見透かすように話かけてくれた。

「カサイ君もクルマ乗るんだっけ?」
「そうですね、今はデミオに乗ってま
す。」
「あ、じゃあコレと一緒?」

そう、実はこの社用車もデミオである。
型は少し前のものだけど、キビキビし
た走り
は健在だ。僕のデミオは最新の
モデルだと一応申し添えた。アカシさ
んは嬉しそうに笑った。

「いいクルマだよね、デミオは。コン
パクトだけどよく走るし、トルクも申
し分ない。派手さはないけど、なんだ
か誠実な感じがあって好感が持てる。
まだ独身だったら僕もデミオを買うか
もしれない。」
オフィスではあまり見せない表情だ。
「あ、でもアテンザとか買った方がモ
テるのかな?いや最近の子はデミオの
方がいい?」
僕はアカシさんがこんな風に話すとは
思わなかったので不意に笑ってしまっ
た。
「さあ、わかんないですけど。」
麗らかな日差しが僕の顔を照らした。
その暖かさとともに少しずつ緊張が緩
んできていた。
 

 
「アカシさんはプライベートで何乗ら
れてるんですか?」
僕は思い切って聞いてみた。アカシさ
んはニヤリと笑ってこちらを見た。
「当ててみて?」
こういうところで急にパスを出すのが
アカシさんだ。気が抜けない。
「えーっと…輸入車ですか?」
僕は恐る恐る聞いてみた。アカシさんは
「違うよ、俺、外車とか乗るように見
える?」と笑った。
「似合うと思います。アカシさんなら
ポルシェに乗ってても驚かないです。」
僕はややお世辞をこめてそう答えた。
「そうかな?そう言われるとちょっと
嬉しい気もするけど。実は俺もマツダ
に乗ってる。」

ああ、なるほど、と僕は思った。
「CX-8。家族を乗せて出かけることも
あるから大きめのクルマがいいんだけ

ど、一人で乗ることも多いから、ザ・
ファミリーカーって感じのクルマは避
けたくって。」

6車線の右端でウィンカーを出しなが
ら、対向車の流れが切れるのを待って
いる。アカシさんには小学生の子供が
いて、この冬はスキーにハマっていた
ので何度も家族を連れてスキー場に行
ったんだと話してくれた。山道を走っ
たりすることもあるから、全輪駆動の
SUV
には助けられたね、と自慢げに笑
った。本当にクルマが好きなんだろう
なとわかる笑い方だった。クルマ好き
の無邪気な表情と、家族想いの優しい
父親の表情が同居している魅力的な笑
顔だ。(続)

#助手席物語 第5話
#国道二号線 #前編
#デミオ #キビキビした走り
#CX-8 #全輪駆動

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